27 7月 10
 しかし研究チームはこのほど、ついにその証拠を惑星状星雲「Tc-1」で発見した。惑星状星雲とは、恒星が一生を終えた後に残された星間ガスとちりの雲である。

 Tc-1には水素が極めて少ない。フラーレンの形成には適しているが、水素の豊富な宇宙ではめずらしい環境だった。炭素と結合しやすい水素が豊富にあると、炭素のみのフラーレンは形成されにくい。

 惑星状星雲Tc-1の元になった恒星は、はるか昔に外層の水素を失っている。しかし最近になって、残存炭素が放出されるという奇妙な現象が起きたために、フラーレン分子が形成されることになった。

 また、カミ氏のチームの発見には、ちょっとした幸運も重なったようだ。フラーレンの温度がスピッツアーの観測に理想的で、この分子が放つ赤外線を検出で きたという。恒星から炭素が放出されてから100年ほど経過しており、温度は室温程度に下がっていたのだ。「あと1世紀もたてば、分子は恒星からさらに 漂って離れてしまい、さらに温度が下がって赤外線望遠鏡では検出できなくなるだろう」とカミ氏は話している。

 同氏によると、宇宙でのフラーレン発見によって星間空間の化学組成解明が進む可能性があるという。特に注目されるのは拡散星間バンド (DIB:diffuse interstellar band)の問題だ。DIBは天体から来る光のスペクトルに存在する未解明の吸収線である。

 例えば、星からの光をスペクトル分解すると、分子によって吸収しやすい波長がそれぞれ異なるため、その光源の星の大気に存在する化学物質の種類がわかる。また、星からの光の一部が地球到達前に他の物質に吸収されると、その部分がDIBとしてスペクトルに現れる。

 科学者の間ではDIBの吸収物質について活発に議論されており、宇宙分光学で最大の問題の一つとなっている。そこで今回、巨大で複雑な構造体フラーレン が宇宙で確認されたため、吸収物質の候補として注目が集まっている。「フラーレンが宇宙に存在すると証明されたからには、DIBとの関係性をはっきりさせ たい」とカミ氏は話す。 今回の研究は「Science」誌7月23日号に掲載されている。
ニュース - 科学&宇宙 - C60フラーレンを宇宙で発見 - ナショナルジオグラフィック 公式日本語サイト

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